夢見カタバミ

ぱるふぁん(twitter→@parfum_de_robe)が見た夢の内容を淡々と記録していきます。

締め出される話(前編)

深夜1時半。手にはスマホと充電ケーブル。私は1人、街を彷徨っていた。 確かに何かの目的を持って家を出たはずだったが、今やそれは消え失せていた。うっかり家の鍵を持たずに出てしまったのか、あるいは鍵を失くしたのか覚えていないが、とにかく自宅から締…

老いと恋の話

田舎のでこぼこ道。どこまでも続く褪せた色の畑。少し暖かい風。ひぐらしの微かな鳴き声。トロトロと走る軽トラック。その荷台に私は腰掛けていた。 私の肌はクチャクチャに老いていて、トラックが小さな凹凸を越える旅に坐骨のあたりが痛む。隣には孫ほど歳…

殺人鬼の話(後編)

全てを思い出し理解する前に、ボブは事務所を出発してしまった。だがボブを追いかけるよりとりあえず他のメンバーを避難させるのが先だ。 事務所の奥には小さな隠し扉があり、そこから狭い階段を降りると外に出ることができる。私は他のメンバーに事情を手短…

殺人鬼の話(前編)

ミュージカル観劇を終え、売店で買ったパンフレットを手に劇場から出ると外はすでに夜だった。 「なんだかよく分からなかったな」 と叔父が言うと、 「ちゃんとあらすじ予習しないからだよ」 と叔母が笑った。 殺人鬼集団に狙われる街を自警団が守るストーリ…

マツキヨとPayPayの話

涼しい夜だが、少し歩くと鼻の頭にじんわり汗が滲む。マツモトキヨシに着くと、いつも通り店の外に重ねられた買い物カゴを一つ取って明るい店内に入った。 マツモトキヨシでの買い物はPayPayで支払うと決めている。感染症対策でもあるし、キャッシュレスでの…

終電を逃す話

祖父母の家に向かおうとして終電を逃してしまった。乗り換えに失敗したのだ。ギリギリの乗り換えで急いだあまり、間違えて別のホームに来てしまった。気づいた時には、もう終電は発車した後だった。 『終電逃しちゃった』 『今〇〇駅。タクシーで向かうね』 …

電磁気学と逃避の話

「では、始めてください」 試験官の声とともに、学生たちが一斉に紙をめくる。どの学生も真剣そのもので、教室の空気は殺気立っている。それもそのはず、これは卒業試験なのだ。この試験の合否で、卒業できるか否かが決まる。 手元の紙をめくると、問題文が…

夜逃げの話

「引っ越すよ」 そう言って、母は真夜中に私を起こした。 真っ暗な家の中で、なぜか電気もつけずに無言で荷造りをする。大きなリュックサックと、ボストンバッグと、いくつかの段ボール箱に全てを詰め込む。あっという間に家の中は空っぽになった。名残惜し…

愛と死の話

彼は子どものように、落ち着きなくうろうろと布団の周りを歩き回っていた。気分が高揚しているのか、楽しそうにはしゃいでいる。 「もう、布団に入らなきゃダメでしょ。もうすぐなんだから」 私も口ではそう窘めるが、内心ではそんな彼を微笑ましく思いつつ…

黒猫の話

道路の上に、黒猫が倒れていた。いつも私に懐いている馴染みの野良猫だ。目を閉じてじっとしており、生きているのか死んでいるのか分からない。よく見ると体のどこかから出血しているようで、小さな血溜まりができている。 とりあえず建物の中に運び込まねば…

殺人遊園地の話

あのタモリがテーマパークを作ったらしい。オープン日、さっそく私は高校時代の友人達とともに長い列に並び、チケットを買いテーマパークに入った。ずいぶん広い敷地だが、その中身はどうやら東京ディズニーシーの下位互換のようだ。やがて夜になり、閉園時…

お菓子投げ戦争の話

プラネタリウムのような劇場で、『ノートルダムの鐘』を鑑賞していた。私の知っているノートルダムの鐘のあらすじとはだいぶ違うようだった。 『美女と野獣』のアフターストーリーという位置付けで、主人公はベルと野獣の間に生まれた息子という設定だった。…

自分と結婚する話

大きな洋風の屋敷で、カーペットの敷かれた薄暗い廊下を走っていた。裾の広がった真っ赤なドレスと華奢な踵の真っ赤なハイヒールのせいで、ずいぶんと走りづらい。 途中で大学同期の男子二人とすれ違った。二人とも運動用のシャツと短パンでラフな格好をして…

飛べない話

石畳の道が、長く長く続いている。二車線分はありそうな幅の広い遊歩道だ。どうやら観光地であるらしく、旅行客と思しき人達が点在し、ざわざわと心地よい喧騒をつくりだしている。道の両側には木造のヨーロッパ風建築が綺麗に隙間なく並んでいる。ベランダ…

相談に乗る話

広い、広いカフェだった。大きなガラス戸から外の日差しが優しく差し込み、道ゆく人たちが見えるが、その喧騒は届かない。店内にはテーブルがたくさんあるが、客はまばらだ。その割には何人もの店員が忙しそうに歩き回っている。カフェのちょうど真ん中あた…

医学部に入る話

大きなリュックを背負って、私は空港の外に出た。小さめのバスターミナルになっていて、人の列がいくつかできている。大きな白い長距離バスに近づくと、窓からこちらを見ている恋人の姿があった。 プシューと音を立ててドアが閉まり、バスはゆっくりと発車し…

変身する話

広い座敷で、宴会が行われていた。 「瀬戸くん、わかなちゃんと結婚したんだってね」 隣に座っていた女性が、私に話しかけた。ほんのり顔が赤らんで、どうやら少し酔っているようだ。そうなんですか?と私は驚いて、そして瀬戸康史の方に顔を向けた。彼は少…

空飛ぶ船の話

東京ディズニーシーに新しいアトラクションができていた。二人乗りの小さなヨットのような形で、二匹の空飛ぶ狼がそれを引いている。船体には小瓶がぶら下げられていて、その中に入っているティンカーベルが妖精の粉をふりかけることで船を浮かび上がらせて…

真夜中の少年の話

真夜中の校庭の隅で、何かから逃げていた。住んでいるアパートで何かに襲われて、同居人の少年に手を引かれつつ、裸足で飛び出してきたのだった。少年は昭和の小学生のような見た目をしていて、ドラえもんに登場するのび太に似ている。私は少年よりも年下で…

ゾウと百貨店の話

百貨店の中には、私以外に誰もいない。古く、広く、豪奢で、ロンドンのハロッズのように重厚な造り。何者かに追われながら、誰かを見つけるために、どこかを目指して走っていた。百貨店の中になぜか図書館がある。ちょうどそこに差し掛かったところで、追っ…

中村優一さんに会いたい話

休日の昼下がり、いつもよりものんびりと身支度をし、着慣れた高校の制服に袖を通す。リビングでテレビを見ていた母がふと思い出したようにこちらに顔を向けた。 「ねえ、今日の夕方、〇〇高校で中村優一が講演会だって」 中村優一は俳優だ。私の大好きなテ…