夢見カタバミ

ぱるふぁん(twitter→@parfum_de_robe)が見た夢の内容を淡々と記録していきます。

変身する話

広い座敷で、宴会が行われていた。

「瀬戸くん、わかなちゃんと結婚したんだってね」

隣に座っていた女性が、私に話しかけた。ほんのり顔が赤らんで、どうやら少し酔っているようだ。そうなんですか?と私は驚いて、そして瀬戸康史の方に顔を向けた。彼は少し離れたところの卓にいて、スーツを着た中年男性達とビール片手に談笑している。

「私もつい最近まで知らなかったのよ。でも知ってから過去の映像を見返すとさ、明らかにわかなちゃんと仲良さそうなの。まあお似合いの二人よね」

そう言って女性はおもむろにスマートフォンを取り出し、いくつかの動画を再生し始めた。わかなちゃんと言うのは葵わかなの事である、と私はその動画を見てようやく気づいた。女性の言うように、瀬戸康史葵わかなに向ける視線は他の人へ向けるそれとは明らかに違った。

俳優の瀬戸康史と、女優の葵わかな。確かにお似合いだ。そしてその事を認めたがらない自分がいることに気づいた。

私は、瀬戸さんに恋をしていた。

 

「これをお前にやる。三日でマスターしろ」

と、師匠は言った。

奇妙な空間の中に師匠は座っていた。二畳ほどのスペースに、大きな背もたれと肘掛のついた黒い回転椅子のみがある。壁は全て本で埋め尽くされた本棚で、天井はとても高くてはっきりとは見えない。師匠の風貌は、ハリーポッターの映画に登場するスネイプ先生にそっくりである。

師匠が私に手渡したのは、小さめのバイオリンだった。

「分からない事は俺に聞くな。瀬戸に教えてもらえ」 

このバイオリンは元々師匠が持っていたものだ、と私は思った。そのバイオリンを自分に任せてもらえることが、たまらなく嬉しかった。

「私、全力で頑張ります」

師匠は椅子を回転させて背を向けた。

「人にわざわざ頑張るなんて宣言する奴は屑だ」

 

新しくて小綺麗な図書館のような場所で、私はバイオリンを片手に小走りしていた。

「瀬戸さん!」

私が呼ぶと、瀬戸さんはにっこりと微笑みながら振り返った。グレーのぱりっとしたベストに白いシャツ、紺のネクタイに銀のタイピン。ズボンのポケットに両手を入れて振り返る仕草は信じられないほどにドラマティックだ。

「師匠から受け取ったんです、これ。教えてほしくて……」

「貸してごらん」

瀬戸さんがバイオリンに顎を乗せ、綺麗にビブラートをかけて音を出す。こんな風にしてごらん、とバイオリンを渡され、見よう見まねで私もバイオリンを弾くが、黒板を引っ掻いたような音しか出ない。瀬戸さんは私を励ますように肩をポンポンと叩き、そして歩き去った。

 

瀬戸さんと私は肩を並べ街を歩いていた。ヨーロッパのどこかのような、石造りの建物と石畳が綺麗な街並みだ。

「不安なんです、私。上手くできるかどうか」

「師匠は君に期待しているんだと思うな」

瀬戸さんが諭すように優しく言う。

「やっと引き継げる人が現れて、師匠も嬉しいんだよ」

 

戦う時がきたのだ、と私は思った。街の全てが氷漬けになり、時を止められたかのように街の人々も氷に閉じ込められている。時計塔の上から、得体の知れない何かが紫色の巨大な触手を何本も伸ばしている。

私は深呼吸をし、震える手でバイオリンを弾いた。すると、空から無数の光の点が集まり、私の目の前に降り注いだ。一つ一つの光の強さがやがて収まってくると、それらが人の形をしていることが分かった。

私が彼らを目にするのは初めてだった。だが、私は彼らを知っていた。彼らは私が生まれるよりもずっと昔に、人々を救う為に戦ったヒーロー達だ。

彼らはフルフェイスのヘルメットのようなものをかぶり、人間と動物を合体させたようなフォルムの戦闘服を身につけている。そのうちの一人、ホワイトタイガーのようなデザインの戦闘服の男が、私の方に歩み寄ってきた。

「よくやったな」

その声は、間違いなく師匠の声だった。師匠の体が強く発光したかと思うと、やがて光と師匠は分離し、光は私の手元に飛んできた。光をぎゅっと握りしめ、私はその拳を空につきあげた。

「変身!!!!!」

 

 

 

……という夢を見ました。現実世界で瀬戸康史を特に好きと思ったことは無いですが、NHKで放送されている番組『グレーテルのかまど』に出演している瀬戸康史は好きです。美しいお菓子とそれにまつわる素敵なエピソードを見ることのできる、とても良い番組です。

瀬戸康史とバイオリンというモチーフは、おそらく『仮面ライダーキバ』からきたものでしょうね。私はまだ視聴したことがないので詳しくは知らないのですが、瀬戸康史の演じる主人公はバイオリン職人をしているようです。

 

今日の話は、これでお終い。