夢見カタバミ

ぱるふぁん(twitter→@parfum_de_robe)が見た夢の内容を淡々と記録していきます。

殺人鬼の話(前編)

ミュージカル観劇を終え、売店で買ったパンフレットを手に劇場から出ると外はすでに夜だった。

「なんだかよく分からなかったな」

と叔父が言うと、

「ちゃんとあらすじ予習しないからだよ」

と叔母が笑った。

殺人鬼集団に狙われる街を自警団が守るストーリーで、照明が暗かったのもあってか陰鬱な印象だった。なんだかよく分からなかったな、と私も心の中で呟いた。

 

私は包丁を持って暴れる男を取り押さえていた。なぜなら私は屈強な成人男性であり、この街の自警団『ワイルドキャッツ』のリーダーだからだ。今朝も自警団のミーティングを終えたあと、こうして街に繰り出してパトロールしていたところだ。

相棒のボブに男を引き渡した瞬間、私の中にとある記憶が蘇った。

私はこのストーリーを知っている。これはあのミュージカルの中の出来事と同じだ。

私は知らぬ間に、ミュージカルで見た世界の中に主人公として入り込んでいた。

 

突然、刃物や銃を持った殺人鬼集団が自警団事務所に襲来してきた。私の知っているあらすじ通りだ。彼らは自警団のメンバーを全員始末しようと企んで手を組み、今日一斉に襲撃を仕掛けてきたのだ。

そして、私の知っているあらすじ通りならば、このあとボブは殺されてしまう。なんとしても止めなければならない。

壮絶な戦闘の末、事務所にいた私以外のメンバーは全滅してしまった。なんとか襲撃から逃げ出した私は、ボブが向かったはずの第二事務所へ走り出した。

裏通りに出ると、鍵を開けて無人の第二事務所に入っていくボブが見えた。

「ダメだ!入るな!逃げろ!」

必死に叫ぶが、声は届かない。ボブが扉を開けた瞬間、中に隠れていた男が包丁を持ってボブに襲いかかった。

そして私の目の前で、ボブは殺された。

 

気づくと私は包丁を持って暴れる男を取り押さえ、ボブに引き渡すところだった。時間が襲撃前に戻っている。手続きのために第二事務所へ行くよ、とボブが去った直後に、再び全ての記憶が蘇った。今度こそ、誰も死なせてはならない。

 

 

 

後編に続きます。