過去の夢
「引っ越すよ」 そう言って、母は真夜中に私を起こした。 真っ暗な家の中で、なぜか電気もつけずに無言で荷造りをする。大きなリュックサックと、ボストンバッグと、いくつかの段ボール箱に全てを詰め込む。あっという間に家の中は空っぽになった。名残惜し…
石畳の道が、長く長く続いている。二車線分はありそうな幅の広い遊歩道だ。どうやら観光地であるらしく、旅行客と思しき人達が点在し、ざわざわと心地よい喧騒をつくりだしている。道の両側には木造のヨーロッパ風建築が綺麗に隙間なく並んでいる。ベランダ…
広い、広いカフェだった。大きなガラス戸から外の日差しが優しく差し込み、道ゆく人たちが見えるが、その喧騒は届かない。店内にはテーブルがたくさんあるが、客はまばらだ。その割には何人もの店員が忙しそうに歩き回っている。カフェのちょうど真ん中あた…
百貨店の中には、私以外に誰もいない。古く、広く、豪奢で、ロンドンのハロッズのように重厚な造り。何者かに追われながら、誰かを見つけるために、どこかを目指して走っていた。百貨店の中になぜか図書館がある。ちょうどそこに差し掛かったところで、追っ…