夢見カタバミ

ぱるふぁん(twitter→@parfum_de_robe)が見た夢の内容を淡々と記録していきます。

相談に乗る話

広い、広いカフェだった。大きなガラス戸から外の日差しが優しく差し込み、道ゆく人たちが見えるが、その喧騒は届かない。店内にはテーブルがたくさんあるが、客はまばらだ。その割には何人もの店員が忙しそうに歩き回っている。カフェのちょうど真ん中あたりの席に私は座っていた。テーブルを挟んで向かいに座っているのは吉沢亮だ。伏し目がちにちびちびとコーヒーを飲んでいる。

 

「相談って何なの?」

私が聞くと、彼はカップをゆっくりとソーサーに置き、真っ直ぐにこちらを見つめた。

「俺、福士蒼汰くんに負けてはいないでしょうか」

近年では国宝級イケメンとまでもてはやされている彼にそんな悩みがあったのか。私はあっけにとられたが、親身に相談に乗ってあげることにした。

「私はそう思ったことは無いけど。顔だって個人的には吉沢くんの方が整ってると思うけどな」

「いえ、顔のことではなくて……。俺の顔が綺麗なのは知っているので」

ずいぶんな自信だ。こんな台詞を吐いても嫌味にならないのはやはりその美しさ故だろう。

「売れたのも俺より福士くんが先だったじゃないですか」

福士蒼汰吉沢亮はかつて無名の頃に『仮面ライダーフォーゼ』で共演している。主人公を演じたのが福士蒼汰、そしてそれを支えるサブライダーを演じたのが吉沢亮だった。その後朝ドラ等の出演もあり福士蒼汰は爆発的に売れ、吉沢亮はしばらくあまり有名にならないままだった。

「でも結局は後から追いついたじゃない?タイミングの問題だよ。私はフォーゼの放送中からずっと吉沢くんの方が美形だし売れると思ってたけど」

「顔だけ良くたって俳優としては不十分じゃないですかね。俺には顔しか取り柄がないです」

演技の良し悪しも分からない私は何も言えない。

 

ガラス戸の外で、見知らぬ女性二人組がこちらに手を振った。

「俺そろそろ行きます」

カップの中身を急いで飲み干すと、彼は勢いよく立ち上がった。

「伝票、ここに置きますね」

私の目の前に伝票を置き、そのまま颯爽と店を出て行った。

 

「あの、失礼します」

申し訳なさそうにぺこぺことお辞儀をしながら、〇〇くんがやってきた。なぜかすでにマグカップを両手で持っている。

〇〇くんは大学の後輩だ。丸い目に大きな黒い太縁メガネ。小柄で華奢な体つき。中学生のようにツヤツヤで丸い髪型。常に丁寧な言葉使い。リスのような挙動でいつも可愛らしい。

「代わりに来ました」

と言って、さっきまで吉沢亮の座っていた席に腰を下ろした。

 

テーブルの上のマグカップを両手で持って包みこみ、〇〇くんは前のめりになった。

「僕、吉沢亮さんになりたいんです」

いたって真剣な表情だ。キラキラした目で見つめられ、私は言葉に詰まってしまった。だがここは真実をきちんと伝えねばなるまい。

「それは……どうやったって無理だと思うな……」

「いやあ、やっぱり厳しいですかねえ」

意外にも全く絶望していなさそうな顔で、〇〇くんは照れたように肩をすくめ頭を傾げた。

「うん、そればっかりはどうしようもないよ」

「そうですねえ、いやあ……。無理ですかねえ」

そんなやりとりを、私たちはしばらくポツポツと続けていた。

 

 

 

……という夢を見ました。先週あたりに見た夢です。吉沢亮氏のファンや福士蒼汰氏のファンから怒られそうだと思い書かなかったのですが、奇妙で面白い夢だったのでやはり書くことにしました。

〇〇くんはどうして吉沢亮になりたいと思ったのか、夢の中とは言えとても不思議です。

 

今日の話は、これでお終い。